みよしのぶろぐ

沖縄でフリーライター兼WEB編集者してます三好優実のブログです。

ニヤつき、そして泣いた。一生読んでいたい「うたうおばけ」

本を読み終わったあと、泣いた。

 

わたしは人一倍涙もろいので、本を読んでもドラマを見ても、ときにバラエティを見ていても泣く人間ではあるのだけど、そうじゃなくて、いつもの涙とは別の種類の涙が自分の目の中に溜まって、流れたのが今日だった。

 

今日まで読んでいた本は、涙を誘うような起承転結とか、ドラマみたいに努力が叶ったり熱い友情が芽生えたりとかはなくて、いじわるな悪役も出てこなければ、なにかをのり越えて成し遂げたりもしない。ただ、ただただ日常を綴った本だった。

そしてただただ日常を綴ったこの本を、わたしはここ一ヶ月くらいかけて毎日湯船に浸かりながら読んでいた。丸裸で読みたい本だったから。もともと遅読ではあるが、近年まれに見る遅さで読んだ。

 

読んだ本は、くどうれいんさんの「うたうおばけ」という本。(くどうれいんさんの文章が好きすぎて語ると多分5000文字とか超えそうなので、あえて著者については触れないでおく)

 

うたうおばけ

うたうおばけ

  • 作者:くどうれいん
  • 発売日: 2020/04/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

泣いた。いつもと違う感情で、いつもよりたくさん泣いた。



本に書かれていたのは、若くして才能に恵まれた文章の申し子のような人が書くサクセスストーリー、・・・ではなく、泣いていたら優しいタクシーの運転手によくしてもらったとか、とても期待して見た貴重らしきモノがかなり微妙だったとか、とてもささやかな日常なのだった。

 

驚くほど「日常」だったのに、その日常がどれもとてもキラキラしていて驚いた。流した涙の正体は、今まで感じたことがないような優しさと嫉妬と悔しさ、虚しさと嬉しさと暖かさと後悔だった。

 

そもそもわたしは、ここ1年くらいずっと頭の片隅で気付いていたことがあった。自分はとてもちっぽけな幸せを感じ続けていたいタイプの人間なのに、それではいけないと社会的な幸せを優先しようとしていたことだ。

昔、病気をして1か月くらい入院していたのだけど、病室でも仕事をしたがるほど働きマンだった私に、看護師さんが「あんたの病気は、中間管理職のおじさんがなるような病気だよ」と言い、PCを取り上げた。看護師さんが仕事とは別の感情でわたしに言ってくれていたのがわかったので、従った。

 

それ以来、改めて自分がどう生きたいのか考えるようになった。(PC取り上げられて暇だったし)考えながら散歩した病院の屋上で見た空がきれいで驚いた。そういえば、わたしは沖縄の空がとても好きだった、と気づいた。自分はいったい沖縄にまで来て何をしているんだろうという気持ちになり「この先、何があっても空がきれいだと思えなくなったら立ち止まろう」と決めた。

 

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それ以来、割と自分の心の声に耳を傾けながら生きてきたのだけれど、多分また少し流されていたのだと思う。わたしは単細胞なので、周りにすごい人がいたらすぐにすごい人を目指しはじめてしまう。自分がどういう人間になりたいかを忘れてしまう。

そのことに少しだけ気付いたから、エッセイというたぐいの本を手に取ったのだろう。そして読みながら気づいたのだ。日常の尊さに気付くために、この本に出会ったのだと。

 


毎日湯船でニヤニヤしながら本を読んだ。キラキラした日常に、1日数ページ触れているのがとても幸せで心地よかった。登場する「ともだち」たちのキャラクターも愛しくて、隅々まで好きだなと思った。

だけど読み終わった瞬間、突然いろいろな感情が押し寄せてきて、それが涙として流れ出たのだった。

 

一番最初に浮かんだ感情は

 

わたしはこの33年間、いったいなにをしていたんだ

 

 

だった。本の最後には、こう書かれていた。

 

連載時「実話ですか?」と訊かれることが多かったのですが、それだけ他人から見るとうそみたいな本当の生活を送っていると思うとぞくぞくします。でも、気がつかないだけで、わざわざ額に入れて飾ろうとしないだけで、どんな人の周りにもたくさんのシーンはあるのだと思います。ハッとしたシーンを積み重ねることで、世間や他人から求められる大きな物語に呑み込まれずに、自分の人生の手綱を自分で持ち続けることができるような気がしています。

 

わたしはこれまで瞬間的なことを除き、人生の選択に後悔したことがただの一度もないのだが、たぶん今日はじめて後悔した。わたしは今までどれだけ日常を見落としてきたのだろう。どれだけの素晴らしい出来事を軽んじて暮らしてしまったのだろう。大きな物語に呑み込まれていたのが、まさにわたしだった。

 

キラキラした日常に心底妬いたし、本が読み終わってしまったことも悲しくて泣いた。心から読み終えたくない本だった。一生毎日読んでいたかった。

 

そんなこんなで、今も思い出すだけで涙が出そうな気持になっている。そんな風に、すぐに泣くわたしはとてもちっぽけだ。でもこのちっぽけな自分を抱きしめて、今日からまた、小さな幸せを探しながら生きていこうと決めた。

 

心の奥がパッと明るくなる本こそ、いま必要な本だ。

というわけで、2020年はいろいろなことがあり、いろいろな本を読みましたが、どの本が一番だったかと言われると、間違いなく「うたうおばけ」でした。

 

2021年も、素敵な年になるといいな。みなさま、来年もどうぞよろしくお願いします。来年の目標は、短歌の上達とかエッセイを書いてみるとか、いい本に出会うとか、韓国語を勉強するとか、歌人のともだちをつくるとか、気付けば全部文章のことでした。よいお年を!

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